【笑顔ビジネス②】 目的と手段を混同しない
もう35年も前になりますが、私は日本で初めて「笑顔ビジネス」という取り組みを始めました。株式会社笑顔アメニティ研究所の誕生です。
振り返ってみると、「笑顔」という言葉ほど、人の心を自然に温かくする言葉はないように思います。
日本には昔から「和顔施(わげんせ)」という仏教の教えがあります。お金や物がなくても、笑顔で人に接することが立派な施しになるという考え方です。笑顔や笑いは、日本人の心の根っこにある文化なのかもしれません。
ただ、笑いと笑顔は少し違います。
笑いは誰もが持っている本能です。しかし笑顔は、相手がいて初めて生まれるコミュニケーションの技術です。一人では完成しません。
だから私は、企業にとって最も大切な目的は「お客さまを笑顔にすること」だと考えています。
接客をすることも、商品を並べることも、掃除をすることも、たたみをすることも、すべてはそのための手段です。
ところが最近の現場では、いつの間にか目的と手段が入れ替わる風景が多くなりました。
例えば、笑顔が大切だからと無理に営業スマイルを続けるケースです。営業スマイルという言葉も日本だけしかありません。
もちろん笑顔は大切です。しかし作り笑顔ばかりでは、お客さまもどこか疲れてしまいます。
それよりも、商品の魅力を丁寧に伝えたり、「私はこれが本当におすすめです」と心を込めて提案したりするほうが、結果としてお客さまの自然な笑顔につながることが多いのです。
また、忙しい店ほど作業が優先され、お客さまに背を向けたまま商品整理を続けたり、店の奥で仕事に没頭してしまったりすることがあります。本来はお客さまのための作業だったはずなのに、いつの間にか「作業を終わらせること」が目的になってしまうのです。
ほんの少しの掛け違いですが、このズレは意外に大きな影響を生みます。お客さまが離れ、売上が下がり、さらに忙しくなり、またお客さまが離れていく。
そんな悪循環が始まってしまいます。
だからこそ、ときどき立ち止まって自分に問いかけたいものです。
「私は何のために、この仕事をしているのだろう」
その答えが、私たちを本来の目的へと戻してくれます。
お客さまの笑顔が増えれば、働く私たちも笑顔になります。
笑顔は一方通行ではありません。
相手を笑顔にしようとしたとき、実は自分自身も笑顔になっている。